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2005新春講演会

平成17年1月7日に新春講演会を開催いたしました。

 
2005新春講演会録

 

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野田商工会議所 新春講演会
 2005年
 「今年の経済と経営面の課題」

(チラシPDF)

   日時:
1月7日(金) PM2時?3時30分
    於 :欅のホール小ホール

講 師
(株)ちばぎん総合研究所 取締役社長
       ヌカ ガ マコト
      額 賀  信 氏

今年の経済成長率は?

 景気・経済の動きを考える上では国内総生産(GDP)、その成長率で考えるのが一番分かりやすい。その数字をもとに今年の経済を考えてみたいと思います。実質の伸び率は02年度が0.8%の成長を示し、その後03年度の実績で1.9%、04年度は3月まででの政府見込みでは2.1%成長するであろうとされています。したがいまして、02年以降0.81.92.1と緩やかですが景気の回復が続いてきたことになります。ところが、この景気回復3年目の昨年(2004年)夏場以降、少し景気の回復に足踏み状況が見られ、それが現在まで続いているというのが現状です。それでは、2005年度、つまりは今年の4月以降、来年の3月まではどうだろうかと申しますと...。政府の見通しでは1.6%と出しております。また、民間の多くの研究機関がそれぞれ、昨年の12月に2005年度の見通しを公表しており、一番低い所で0.5%、一番高い所では1.7%となっており、その見通しの平均値が1.1%と出ております。この民間の見通しどおりだということになりますと、昨年の夏以降、やや景気の足踏みが続いているけれども、それがそのままどんどん悪化していくわけではなくて、今年の後半以降はまた、少しづつ回復の足並みを強めてくるであろう。この様に見ているところが大勢ということになります。これを一言で言いますと、

『減速はするけれども、失速はしない』

と、政府や多くの研究機関が見ているということになります。

■なぜ昨年の夏場以降足踏み状態が続いているのか?

 今回の景気回復の背景には「輸出」が良くなったことが挙がります。特に中国・米国の景気の良さが日本経済に大きく寄与しました。また、とりわけ輸出に特化している企業の設備投資が良くなり、「輸出」の好調と共に昨年までの景気を牽引してきました。

 しかし、これまでの景気回復の牽引力になっていた「輸出」が伸び悩んできました。とりわけ中国と米国の景気がそれぞれ若干減速し、その両国向けに対する輸出が落ちてきたということが04年の夏場以降、足踏みの主因です。

 では、その「輸出」がどんどん落ちていくのかと言いますと、多くの方々のご意見を伺うと、中国・米国共にこれからどんどん失速すると見込まれている方は全くいらっしゃらないというのが現状です。そのようなことで考えてみますと今年の景気見込みであります『減速はするけれども、失速はしない』という大方の見方というのが現時点では的を得たものではないかと思います。

■今回の景気回復の特色

 今回の景気回復は、これまでの景気回復過程と非常に大きな違いを成しているということが特色です。

 今回の景気回復は、二極分化を伴いながらの景気回復でありました。どういうことかというと、良い所の景況感が良くなることによって全体の景気が良くなったけれども、悪い所はそのまま悪い状況が続いていて、なかなか解消されないままになっているということです。具体的に言いますと「勝ち組み・負け組み」の格差が非常に大きい。そういう格差が景気回復が緩やかになった今でも、解消されないまま残っています。

 では「勝ち組み」はどういうところなのかと言いますと、例えば大企業。大企業はリストラを非常に強力に進め、それが効いて業績の大幅な改善をしています。それから製造業、これは主として輸出に携わっている製造業なんですが、輸出の好調を背景に大きく業況を改善させてまいりました。それから地域別に見れば東京、人が集まる東京が非常に良くなっているということなんです。ところがその反面、この大企業のリストラのしわ寄せを受けます中小企業、それから輸出と関わらない非製造業、それから人の減っている地方。こういう地域・業種というんものが「負け組み」として残っています。そうして先行きを展望してみますと、今考えられている2005年度の1.1%あるいは1.6%という成長率のもとでは、恐らく、この二極分化が解消されないまま続いていく可能性が高いと思われます。二極分化が相変わらず残ったままの景気回復が続くということが問題として大きくなってくる可能性が高いのです。

 

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■地方経済の三重苦

1.公共投資の削減

 小泉内閣以降、公共投資の削減傾向というものがずっと続いてきました。今の公共投資削減というものが小泉内閣固有の性格であって、仮に総理大臣が変われば、またかつてのような公共投資が盛り返すのではないかと期待を込めている方々は少なからずいらっしゃると思います。

 それでは、本当に小泉首相以外の方が登場してきた場合、公共投資が再び盛り返すのでしょうか?それは非常に難しいでしょう。それはなぜかと言いますと、皆様ご存知のとおり、非常に大きな財政赤字があるということなんです。実際にどなたが総理大臣になられたとしても、今のこの財政赤字の大きさを踏まえますと、かつてのように公共投資のために大きなお金を支出するということは非常に難しいのが現状です。若干の色合いの違いはあるにしても、公共投資が景気を牽引するということは当分期待しにくいと思われます。その意味で公共投資の削減傾向というものが、今後とも多少の紆余曲折はあるにしても続いていくべき筋合いのものとなりました。

 これまで地域の経済を支え、とりわけ需要面から支えてきた公共投資が削減される時に果たして、地方経済はどのようにして足りなくなる需要を埋めたら良いのでしょうか。非常に重く、長く続いていく課題を突きつけられてきているということになります。

2.人口減少

 95年から00年にかけての国政調査の傾向を見ますと、東京圏・名古屋・大阪・近畿のごく一部を除いて殆どの地域が人口減少を始めており、全国約三千二百ある市町村の内、約二千二百の市町村で人口が減りました。今年は、5年ぶりの国勢調査が10月に実施されますけれども、恐らく人口減少地域が更に大きく広がっているように思われます。

 また、年齢数を見ましても、いわゆる生産年齢人口(15歳以上64歳以下)が95年から00年の間に約100万人減り、00年から05年にかけての5年間では、それを大幅に上回る数で減ることが予測されます。そのような経済社会で、どのようにして経済活力というものを維持していくのかという事が国全体、とりわけ現実に人口減少の著しい地方にとって大きな課題として持ち上がっております。

3.経済のソフト化

 地方経済がこれまで力を維持してきた要因の一つに工場誘致(企業誘致)がありました。工場を誘致し、そこでモノを造って雇用と所得を生み出すというのが、地方経済が元気を作り出す源泉だったわけです。しかし、モノ造りの力、経済を引っ張る力というものが、長い目で見ますと大きく落ちてきています。

 経済がソフト化してきますと、ソフト化している産業というのは基本的にはサービス産業なわけですが、これは人が人に対して提供するということがもっとも中心をなしており、人の集まる所ではサービス産業は盛んになります。しかし、人の集まりにくい地方では、なかなか、このサービス産業が経済全体を牽引するだけの力を持ちにくいという状況があります。そのような経済のソフト化が急速に進むと、これまで地方経済が工場を誘致してモノ造りと雇用と所得を満たしてきたものが、それに変わるどのような戦略的な絵を描いたら良いのか、見えてきていないということが非常に困難であります。

■民間企業の構造改革

 景気回復の原動力になった「輸出」の増加の背景には単に中国や米国の景気が良くなったからというわけではありません。そこには、我が国企業の対応力の上昇も挙げられます。民間企業の構造改革の努力が少しづつではありますが実を結んできました。そのことは昨年の景気回復を大きく進める重要な力になったと思います。

 2000年代に入りますと、我が国企業は非常に苦しいリストラ努力というものを続けました。そのリストラの課程で一時失っていたものが国際競争力。この回復が顕著だったと思います。そのような国際競争力の回復を原動力として中国や米国に対する「輸出」というものが伸びたと考えられます。2004年の景気回復をもたらした「輸出」の背景には、単に外的な環境の変化だけではなく、我が国企業の国際競争力を含む適応力の高まりというものがあったと思います。

 例えば、「輸出」が増えたということは、その背景に輸出競争力の回復があったということです。それと同時に輸出関連企業が非常に強力なリストラを進めた結果、収益力が大きく改善しています。利益の絶対額、収益率で見ると、上場企業ではバブルの頃を上回っている状況です。そのように高い収益率、収益水準を達成するようになったことが、実は内部留保により、設備投資を推進する大きな力になっています。これらの改善企業努力の積み重ねによって収益力の改善・回復傾向が背景にあって、今回の景気回復の大きな力を構成したというわけであります。

個人消費が景気を下支え

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 個人消費がなぜ景気回復を支えたのだろうか?今回の個人消費の特色というものは、雇用者所得(賃金)が全体として下がってきたのですが、それにも関わらず、消費性向が高まって、消費を支え、景気回復の下支えとして、大きく作用したということが特色です。

 それではなぜ、個人消費が下げ止まりから更に景気を下支えする力を発揮したのか?

これにはいろいろな要因があります。

 一つは、企業がリストラ努力をすることによって賃金は下げる。その代わりに多くの雇用者は賃金は下がったけれども自分は首にならないで済みそうだという安堵感。したがって、生活の将来設計にメドをつけられた方々が、それまで非常に切り詰めておられた生活を少し緩めたということが挙げられます。

 第二に、現に企業の経営改善努力の結果として、雇用を吸収する力が高まり、昨年はかなり失業率も低下し、新たに職を得た人々が少なくなかったという事。

 確かに賃金の絶対水準は下がってきたわけなんですが、その代わりに将来設計が立ち、あるいは新しい雇用といった方々が増えた事が、この個人消費を支える大きな力になっております。

 そのような意味でも、個人企業のリストラ努力というものが個人消費を下支えしたというわけです。

■改革なくして景気回復なし

 小泉内閣就任当時に良くおっしゃられていた『構造改革なくして景気回復なし』という言葉を憶えておられますでしょうか?実は、従来型の景気対策というものを、小泉政権誕生からは全く謳われておりません。小泉首相の『改革なくして?』というのは、『何も景気対策をしない』という事が改革に置き換えられているのではないでしょうか?しかし、そのことによって、民間企業は政府頼みに依存しても、なかなか自分の状況が良くなるわけでもないので、それぞれ自助努力を始めた企業が多くあったはずです。その中でのリストラ努力が積み重なって、前述の企業内構造改善努力に繋がりましたし、その努力が景気回復を目指す原動力になったのではないでしょうか。

 しかし、対しまして、行政部門のリストラを考えてみますと、民間努力と比べてあまりにも不十分ではないでしょうか。その不満が残ったまま問題なのが増税路線というものが採られようとしていることです。昨年の10月以降、保険料が上がってまいりましたし、今年から来年にかけてはいくつかの具体的な増税の対応策が既にスケジュールに載ってきているわけです。

 我が国の抱えている財政赤字の大きさというものは非常に大きい。だからこれに対する対応を一刻も早く進めなければいけないことに間違いありません。しかし、これから実行されていこうとする増税が、公的なリストラを伴わないまま、公的部門の生活を支えるために使われてしまう可能性があるわけです。民間企業の構造改革の努力があってこそ、今回の景気回復に繋がってきたという果実を、公的部門が搾取することになるのでは?と私的には思えてなりません。

 増税そのものを懸念するのではなくて、公的な部門のリストラが不十分なまま増税が行われそうな、そういう雰囲気が強まっていることに懸念を憶えますし、景気に与える影響が心配です。

 2005年こそ、公的部門の改革なくしては景気回復はないという年だと思います。

人口減少社会の経営

 明治以降150年に渡って続いてきました人口の増加というものが、いよいよ、今年か、来年をピークにして確実に下り坂に移ります。多くの方々は新聞等でそういうものを見ていますから、あるいは数字も分かっておられるでしょう。しかし、その分かっている中身を何となく分かるのではなくて、きちんと自分の経営戦略の中に取り入れること、それが今年の最大の経営課題です。

 人口減少に伴ってどのように社会が変わっていくのか?これまで通りの経営を続けていきますと、確実に市場のパイが小さくなるということです。これは全ての企業にとって非常に重要な事実です。

 それでは、今後どのような経営をしていけば良いのかといいますと、論理的に考えますと、基本的にはポイントは3点あります。

1.売上が伸びなくても利益の出る体質にする。

 別の言葉でいいますと損益分岐点を下げる、固定費負担を下げるということです。固定費の大きなもののとして設備、不動産、人件費が挙げられます。人件費に関しては、会社の業況の応じて柔軟に変えられるような対応を進めていくことが重要です。

2.業界内のシェアを高める。 これからはなかなか国内市場が伸びることはありません。むしろ、傾向的には下がっていく可能性が高いのです。そういう時に、もしも自分の企業を守ろうとすれば、シェアを上げるしかありません。それも徹底的に上げていくことです。

3.需要の伸びる分野の育成

 あるいは新しい事業を創造するという事です。需要の伸びる部門の一つが「輸出」です。これは例えば、中国や東南アジアをはじめとしまして、海外市場は非常に伸びるわけです。また、日本の産業構成から見ますと実に72%がが第三次産業に属しています。しかし、基本的にその産業界は国内需要に依存しています。その中で、同じ国内需要の中でも伸びる分野を探していく事、もし出来れば自ら新しい事業を創りだすことも考えていかなければなりません。

 以上が、基本的な対応策となります。

 
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